最近聞いている音楽2022桜東風

動向

なんだか撤退戦を強いられているような、長い冬が終わったら、異動になった。四月の風は特に乱気流で、あっちこっち振り回されたりもしたのだが、中村佳穂が「いき延びるたび」と歌っているのを脳内でリフレインしながら、最近は誰彼に「ひとまずは生き延びるのが大事です」と繰り返していた。ようやく一息つけそうな見通しが見えてきたようだ。
病やら戦やら何やらの、現在進行形で続くダークサイドの雲をなんとかやり過ごすのか。深刻になりすぎず、一方で忘れず、どう付き合っていくのが我々にとって良いことなのか、考えたりしている。目の前の心地よいものや小さな幸せを大切にしつつ、社会とどう関わっていくか、というか。頭の中のオードリー・ヘップバーンが「Show me!」と歌っていても、はっきりしない言葉しか紡げないところがちょっと辛いけれど。

邦楽

  • ASOBOiSM - 明日はくる feat. 関口シンゴ

youtu.be
「明日はくる」というテーマは、暗にネガティブな今日からポジティブな明日への転換に希望を見出すことが一般的ではないかと思うのだけれど*1、そこでは「転換」があることから直線的な時間軸が想定される。しかし、この曲は「ぐるぐる回る」円環的な時間軸が採用され、「良いことかも/悪いことことかも/わかんないけど」「とりあえず」くる明日を歌っている点に、今っぽい力みのなさを感じる。

  • 中村佳穂 - Hank

youtu.be
仮歌作っていた時にスタジオの近くに阪急があったからという理由で仮タイトルをつけていたら、「糸の一束」という意味があると知ってそのまま曲名にしたという話を聞いた。本当かしら。でも、それは歌詞が言うような些細なことなのかもしれない。
「些細なことだよきっと/大事なことはねほんと/ここにいるのはねきっと/救われるためだよ」

  • 松木美定 - 実意の行進

youtu.be
アウトロのピアノが良い。心のゆらぎや非一貫性のようなものを歌う例はいろいろあるけれど、行進という統率された語感のあるタイトルは不思議だなと思う。

  • Athos feat, tea - Higher, higher

youtu.be
「グレートトラバース3 ~日本三百名山全山人力踏破~」が長い旅路を終え、番組で撮った映像でPVのような映像を流していたのが印象的だった。三百名山の中では、雪の鳥海山から日本海を望む風景が素晴らしかったので*2、冬山は難しいだろうけれど、一度行ってみたいなと思った。

youtu.be
近年の80'sシティポップリバイバルの中で注目された曲の一曲らしい(1981年発売)。


件のDJであるNight Tempoによるedit ver.もあるのだけれど、原曲の方が面白いかな。

open.spotify.com
この曲を根本さんの声で歌われるの、ちょっと反則なんじゃないかと思う。

youtu.be
ちょうど最近だとサントリーの「ほろよい」CMで、kZmと佐藤千亜妃による「今夜はブギー・バック nice vocal×水星」と、池田智子とTENDREによる「水星×今夜はブギー・バック nice vocal」をやっており、tofubeatsの「水星 feat. オノマトペ大臣」のマッシュアップで「水星にでも旅に出ようか」と歌っている。そんなタイミングで聞くと「月でも目指そうか」という本曲は、少しスケールが小さく感じてしまうところもあるのだけれど、しかしなんだかこの曲調は、公転周期が一回りしてきたような感じもする。

洋楽

  • Prequell - Part V

youtu.be
プリケル(Prequell)とは、フランスの指揮者トマ・ルーセル(Thomas Roussel)によるプロジェクト名、らしい。奏者が縦に並ぶこのライブバージョン(パリ五輪の前哨戦イベント?)は、音ズレをどうやって調整したのだろうかと思わせる(演奏大変そう)。カリンバみたいな金属音とドラムによる特徴的なリズムと、ストリングスのドラマチックなメロディが興味深い。

  • H6im - Seto kiil ja vinne kiil

youtu.be
エストニアのバンド。セトゥという少数民族のグループらしい*3。言語はよくわからないんだけれども、「セトゥ語とロシア語」みたいな曲名なんだろうか。関係ないけれどGoogle翻訳にかけると「瀬戸」と訳されて、妙なミスマッチ感がある。

  • 李克勤 - 紅日

open.spotify.com
香港ポップス「四天王」の一人、李克勤(Hacken Lee)による大事MANブラザーズバンド「それが大事」のカバー。この広東語バージョンは1992年に発売され、TVドラマ主題歌になっていたらしい(中国でのカバーとしては、その後2005年に北京語バージョンも作られた)。ラストに向かってスピードアップしていくのが特徴なのだろうか。中国のインディーズゲーム「昭和米国物語」の主題歌が本家のそれだったのを機にいくつかのカバーを聞いてみて、この曲の広がり方や各地での受容のされ方を考えたりした。

  • Trio Mandili - Kikile

youtu.be
ジョージアのフォークトリオ。同国の民族楽器であるパンドゥリについて調べていて見つけた。3人のハーモニーと自撮りの映像に映り込む町の人々の風景が楽しい。

  • Trio Mandili - Galoba (The Prayer)

youtu.be
同グループがロシアのウクライナ侵攻の翌日に上げた曲。

その他

  • Raujika - Aiso Logic

youtu.be
J-WAVEの「UR LIFESTYLE COLLEGE」のエンディングで吉岡里帆が今日のまとめを言う際のBGM曲、オルゴールみたいな良い曲だなと思っていたのだが、この曲のアレンジらしい。

youtu.be
春の烈風の名を持つ曲なのに、曲調はやさしく、ほんの時折一陣の風が吹くような感じの曲。そういえば、異動前の最後の夜に、職場を出てすぐの交差点に来たところでふっと花風が吹いて、散り際の桜が雪のように舞い落ちてきて、何かの一区切りを祝われているような気がした。

*1:坂本九明日があるさ」、高橋優「明日はきっといい日になる」等

*2:関東から行きやすい甲信の山々からは基本的に海は見えないので、そういった物珍しさもある。

*3:H6im - Seto Folk